戦場に架ける橋、平和に架かる橋

ヤンゴンの郊外、ティラワ経済特区に行ってきた。

ドーボン橋はヤンゴン地区とタケタ地区を結ぶ大橋で、2015年から工事が始まり、今年の8月に建設が完了した。周辺道路は舗装され、新しい黒々としたアスファルトの道路と大きな橋が川に隔たれた地区を結んでいる。

日本のODAによって建設されたこの橋は、単純に国内の地区と地区とを結ぶ以上の価値を持っている。ベトナムのダナンを始点に、ラオス、タイを通りミャンマーまでを直に結ぶ東西経済回廊。国家間を陸路でつなぐこの道路は、いまだミャンマーの中心地、ヤンゴンへとつながっているとは言い難い。ヤンゴンまでにある大きな川が細い道への迂回を余儀なくさせているからだ。ドーボン橋、そしてこれから建設されるバゴー橋などは東西経済回廊をヤンゴンまで伸ばす役割がある。国と国を結ぶ回廊の終着点となるための橋なのだ。

かつて、泰緬鉄道という鉄道が日本軍の手によってかけられた。劣悪な環境で捕虜を無理やり働かせて作った橋はすぐにアメリカの爆撃に晒され、あるいは構造の欠陥ゆえに尽く壊れていった。今はタイの郊外を僅かに走るばかりである。大東亜共栄圏という理想の名の下に武力でアジアを統治しようとした旧日本軍は結局その野望を実現することはできなかった。

いま、アジアの国々は様々な産業をお互いに依存しあって発展している。

かつて武力で日本が目指した野望は、インターネットの発達や社会の成熟とともに大志によって起ころうとしている。

インターネットが発達し、情報は誰もが迅速に得ることができるようになった。それでもいまだ、物理的な距離は確たるバリアーとして存在している。しかし同時にそんな物理的な距離すらも少しずつ近くなっている。それぞれの国がそれぞれのアイデンティティを保ちながら、共生していく。テクノロジーの発達はそうした社会を作ることができるだろうか?

これからもヤンゴンから考えていきたい。

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